木原久美子

客員研究員 木原久美子


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研究内容:

腸内共生系の再構築過程の理解に基づいたシロアリ共生系の高効率バイオマス分解メカニズムの解明と生物間共生駆動原理の導出:


自然界に共生関係は普遍的に見られますが、それらの共生関係の中には生態系の恒常性に関与する機能をもつものがあります。シロアリはそのような機能を持つ共生系のひとつで、腸内に共生している微生物とともに、森林の植物枯死体を分解する物質循環の一端を担っています。植物枯死体は難分解性有機物複合体のリグノセルロースから成るため、多くの生き物は資源としてこれを利用する事が出来ないという中で、シロアリ共生系はこれを高効率に分解・資化する事ができるのです。シロアリ共生系がもつこの機能の詳細は、未だ明らかではありません。なぜならば、多くの天然共生系と同様に、共生系を構成している生物を単離して培養する事が出来ないため、解明には多くの困難があるからです。そこで、共生生物を単離して理解しようとするのではなく、共生系全体をひとつのシステムとして捉え、系が持つ機能や系が成立するメカニズムを解明しようとしています。
シロアリ共生系が持つリグノセルロースの分解機能は、実は、すべてのシロアリが保持しているわけではありません。生まれたてのシロアリや脱皮直後のシロアリは、腸内に共生微生物がいないため、植物枯死体を栄養源として生育する事は出来ないのです。これらのシロアリは周囲の個体から受け取る栄養に依存した状態にあり、水平感染によって共生微生物を獲得すると考えられていますが、共生微生物がどのような過程を経て定着し、その機能が発揮されるようになるのかは明らかではありません。シロアリは終齢に至るまでに脱皮を繰り返して成長しますが、その度、共生微生物の喪失と獲得・定着・共生系の再構築が繰り返されます。このような、動的な共生系の構築プロセスを解明する事や、定常状態に達し安定して維持されている静的な共生系の状態を解明する事は、自然界における複数生物から成り立つ共生系の形成過程に関する基礎的な生物学的知見を与えうるのではないかと考えています。さらにこの知見は、植物バイオマスを高効率で有用利用するための基本的な情報を与えうる可能性を持つ事から、工学的な応用が期待されています。

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1. Kumiko Kihara, Kotaro Mori, Shingo Suzuki, Naoaki Ono, Chikara Furusawa, Tetsuya Yomo; Global/temporal gene expression analysis of Escherichia coli in the early stages of symbiotic relationship development with the cellular slime mold Dictyostelium discoideum, Biosystems, 2009 May;96(2):141-64





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