生物圏に学ぶ、持続可能な社会への基盤技術創出
エコシステムを丸ごと解析するというコンセプト
最近になって、世界的に持続可能な社会の構築の必要性が叫ばれ始めるようになってきました。これは、化石資源という過去のバイオスフェアで蓄積されたバイオマスに頼って、現在の地球上に過去の炭素を大量に持ち込んだ人間の産業活動により排出されるCO2による地球温暖化の問題が非常に大きな理由となっています。
しかし、我々の社会は、エネルギーも、様々なプラスチック・繊維のような材料も、こういった化石資源・化石燃料に頼っており、これを代替する新たな炭素源・エネルギー源はなかなか見つかってきませんでした。
一方で、私たちの足元を見てみれば、実は今現在も地球上では膨大な量の炭素が流通しています。これは、海の微細藻類・陸上の植物による太陽光・水・二酸化炭素を原料とした有機物一次生産に端を発する雄大な生物圏の営みに他なりません。
しかし、そのなかで物質の生産者・変換者・分解者として非常に大きな枠割りを果たしているさまざまな生物に関して我々はどれだけ知っているでしょうか。答えは、99%以上知らない・・・です。
彼らの営みを知ることが出来れば、我々は使い切れないほどの炭素源を得ることが出来ます。しかし、自然はなかなか我々にその襟を開いてくれないのです。
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一方、現在進行中の地球温暖化の問題は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の直近の報告(AR4)にあるように、人間活動によって排出されるCO2をはじめとする様々な物質によることが考えられつつあります。しかし、これについてもまだ我々は知らないことが多いのです。特に、生命圏の中で元も優占している微生物の生態系機能は、まだほとんど知られていません。そのため、IPCCにおいて用いられたシミュレーションも、実は生物学的な効果がほとんど考慮されていないものです。
我々は環境中のもっとも主要な役者である微生物たちの働きをもっと知る必要があります。
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我々はそのために生物群、さらには特定の生態系を丸ごと理解するための全く新しい試みを始めています。
理化学研究所植物科学センターの先端NMRメタボミクスユニットの菊地ユニットリーダーとの間での緊密な連携によって、様々な生態系における物質の流れをNMRを用いたメタボローム解析法で把握すると同時に、それに応じた遺伝子・タンパク質そして微生物の群集構造がどのように変化していくかを、全体的に俯瞰していこうという試みです。
アメリカではこのような試みは連邦エネルギー省の主導の元、多大な予算と施設、人員が投入されて、メタゲノムという手法を核にして急速に進められつつありますが、我々の方法はこれよりもさらに実際の機能因子に近く、ダイレクトに微生物たちのもつ様々な機能にアクセスすることを可能に出来ると考えています。
メタゲノムはもとより、メタトランスクリプトーム・メタプロテオーム・微生物群集構造解析といった、生物を構成する要素の集合体を科学する方法は「オミックス」科学と呼ばれ始めていますが、我々はこれをいち早く統合的にバイオスフェア全体に展開するという夢の実現に向かって進んでいます。
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理化学研究所は先進的な施設が充実しており、我々は現在所内での連携によって、各種オミックス解析を統合した、エコシステムの総合的な解析技術の確立を目指しています。
これはまだ産声も上げていない新しい試みでありますが、いくつかの要素技術はすでに開発済みまたは開発中であり、今後急速に需要が増すであろう環境中からの生物資源の効率的な取得と、日本発の世界で使われるバイオマス利用技術の創出といった動きの役に立てればと考えています。
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我々は「創る」「守る」「予測する」そして「循環する」の4つの目標を遠くに見据えて、地球と共生する新しい社会基盤の構築を、ほかならぬ母なる地球から学んで行きたいと考えています。そして、現在この文脈で海洋の微細藻類に関する研究を展開しつつあります。
最新の動きは随時このHPやブログなどでレポートしていきたいと考えています。
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以下、随時更新...
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