エネルギーを使わずにバイオアルコールを生産することを夢見て

シロアリの共生原生生物に関する研究(バイオマス編)



シロアリは非常に高いバイオマス資化能力を持っています。その能力は木質バイオマスの中のセルロースおよびヘミセルロースを70−99%までの高効率で利用する(リグニンはフンとして排出される)という過去の研究からも明らかです。
このシロアリの能力の大部分は、腸内に共生する共生原生生物によると考えられています。シロアリから、これらの共生原生生物を除去すると、シロアリはセルロースのみをエネルギー源として生きられないことが知られています。
しかし、これらの原生生物は難培養性の微生物であり、これまでの分離培養中心の方法論ではその詳細は分かりませんでした。

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そこで我々は、これらの原生生物コミュニティー全体から発現遺伝子を収集し解析する「メタトランスクリプトーム」解析を1998年より世界に先駆けて行ってきました。これまでに、5種類のシロアリ類縁生物の共生系に対してこの解析を実施しており、図の通り5種類の糖質加水分解酵素(GHFs)が共通して働いていることを突き止めています。
これらの酵素は、面白いことに種類ごとにほぼ同じ量比で使われているらしいことが我々の解析から分かってきており、その詳細を明らかにすることによって、この高効率の分解系を酵素のみから成る人工的なバイオマス糖化システムに応用するために、現在さらに大規模な解析を実施しているところです。

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実際に発現に成功した酵素に関しては、非常に高いVmaxと低いKm値を示すことが示されており、従来の酵素に比べて非常に高機能なセルラーゼである可能性が考えられています。

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現在我々は生研センターより受託したプロジェクトにより、このシステムを人工的な糖化システムに応用するためにさらなる研究を進めていますが、これまでの結果からも、図のようなスキームがシロアリの高効率ハードバイオマス資化機能に重要であることが示唆されています。

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従来の植物バイオマスからのバイオエタノール生産工程では、エネルギーを投入する必要のある前処理工程で、リグニンを除去又は破壊することが必須でした。しかし、シロアリのシステムを用いることで、この工程を省略した、飛躍的にエネルギー効率の良い木質バイオマスからのバイオエネルギー・バイオマテリアル生産システムを構築することが可能となってくると考えています。

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